家庭にあるインクジェットプリンターの中をみると、インクカートリッジをコントロールするためにフィルム上の配線(はいせん)ケーブルをみることができます。
高分子フィルムは、曲げても折れにくく、また、しなやかであることから、電子回路(でんしかいろ)の基板(きばん)に用いられています。
スマートフォンや携帯電話などあらゆる電子機器の小型軽量化・スリム化に欠かせない存在です。
特に、耐熱性や寸法安定性などが必要な場所には、耐熱性フィルムが用いられていています。

7 図1 耐熱フィルム

耐熱フィルム(ユニチカ提供)

高分子フィルムは、電車やバスの交通系のICカードの基板にも用いられています。
日頃、ピピッとなる電車のICカードには電池も入っていません。
それでは、どうしてカードを認識できるのでしょうか。
それは、RF-IDという回路です。
改札でカードを読み取る機械の周囲には、磁界(じかい)が発生しています。
磁界とは、簡単にいうと磁石の力が働く空間です。
この空間にICカードが通過すると、カード内部の渦巻き状の配線が磁気を受けて電流を発生します。
この電気を利用することでカードの中のICチップが、データをやりとりします。

7 図2RFID

ICカードのしくみ

この電流の発生は、学校で習う『ファラデーの法則』を利用しています。
今、フィルム上にインクジェットプリンターのような機械で半導体(はんどうたい)を印刷して作る研究が行われています。印刷方式ではありませんが、わたしも、30年前に高分子のフィルム上に太陽電池を作る研究をしていました。
下の写真は、そのときに作ったフィルム上の太陽電池です。軽くて折り曲げることもできます。
7 図3 太陽電池

フィルム上の太陽電池

フィルム上に半導体やセンサーを開発により、身体に装着して利用することが可能になるウエアラブル・エレクトロニクスの時代が到来します。
そして、引っ張っても配線がきれないための配線材料(導電性(どうでんせい)ペースト)が開発されています。
柔らかく、しなやかで、あらゆる形に写真のように変形できます。
7 図4_ストレッチャブル導電性ペースト

フィルム上の配線材料(東洋紡提供)

将来、衣服にセンサーをつけた着るコンピュータができれば、心臓病の患者さんが、心臓トラブルが起きたときに即時に病院へ連絡が入る健康管理のシステムができます。
情報や通信の研究が進歩し、10年後、20年後は、今とまったく違う世界になり、高分子の役割はより重要なものとなるでしょう。

ひらさか まさお