日曜日の昼下がり、慎太郎は、パソコンで、会議資料を作成していた。
「お父さん、教えて」と、隼人が教科書をもってパソコンの画面を眺めるように傍にやってきた。
「何だい?」と、慎太郎。
隼人は、「教科書には、プラスチックの熱への強さや燃えた時の変化を調べる実験のところで、『ポリ塩化ビニル(PVC)などは燃やすと有害な物質が出ることがあるので、必ず換気を行い、発生する気体を吸わないようにする』と書いてあるし、友達は、プラスチックの容器から溶け出したものが原因で子供の数が減っているとか、言ってたけど、プラスチックって悪者なの。プラスチック博士って呼ばれてもちっともうれしくない」と、真顔で話しかけてくる。

「ハヤちゃん、食塩は毒か?」
「違うよ」
「違うよね。しかし、食塩は、過剰にとれば体重の減少や、発育を阻害したり、ひいては死に至ることもあるんだよ。では、ビタミンはどうかな?」
「健康のためにはとらないといけないものだから毒なんかじゃないよ。ビタミン剤があるし、お父さんも飲んでいるじゃない」
「そうだね。でもビタミンも種類によっては、過剰にとると肝臓機能を弱めたり、疲労感、嘔吐などの健康障害を引き起こす可能性があるんだよ」
「ふ~ん」
「健康に良さそうとか、悪そうとか、環境に良さそうとか、悪そうとか、難しいけど主観的、情緒的な判断でなく、またテレビで言っていたとか、新聞に書いてあったからとかでなく、科学的な根拠に基づく判断が大切なんだよ。
ちょっと脱線するけれど、だから、テレビや新聞には社会の公器として正しく報道することが求められているんだよ。
どのような物質でも体の中に摂りいれる量を増やしていけば、どこかで必ず障害が現れるものなんだよ。
体に摂りいれる量が少なければ、体の中で分解されたり、体の外へ排出されたりするので障害を引き起こさない、つまり安全ということになるのだよ。
『薬も過ぎれば毒となる』という諺があるんだが、まさにこのことを言っているんだよ。
テレビのコマーシャルには『使用上の注意をよく読み、用法・用量を守って正しくお飲みください』って書いてあるだろう」
「安全な飲み方、使い方をしなければ安心できないってことなんだね。
「プラスチック製の飲み物の容器などの安全性については、パソコンで検索してみるか」と、慎太郎は「プラスチック製食品容器の安全性」と打ち込む。
「これかな」と、「食品用プラスチック製品の安全性—日本プラスチック工業連盟」をクリックする。

冒頭に「人類が誕生して以来使い慣れてきた天然物は、安全な使い方についての知識が普及していますが、近年急速に普及したプラスチック製品は、合成化学品であるだけに、とかくその安全性に不安をもたれる傾向があります。
しかし、食品と直接接触して用いられる器具や容器、包装はいうまでもなく安全なものでなければなりません。
わが国では厚生労働省の規制に加え、プラスチック製品を生産する関係業界でも、それぞれの立場で安全性の確保に努力し、厳しい規制をしておりますので、安心してお使いいただけます」と書かれてあった。
さらに「安全性についてのQ&Aをクリック、親子でいろいろと勉強したのであった。
「お父さん、プラスチックってどちらかといえば悪者扱いされているように思うけれど、世の中の役に立っていると思うので、僕は僕なりに勉強していきたいな」と、慎太郎に宣言しながら、夏休みの宿題の自由研究では、プラスチックに関することをまとめていこうと、心に決めた隼人であった。
(日本プラスチック工業連盟のウエブサイトならびにポリオレフィン等衛生協議会WS、同協議会発刊の「知らなかった知りたかったプラスチック」等を参照いたしました)

とがみ むねひさ