工学院大学 大学院 修士課程1年生の塩本昌平です。
私達の研究室では「ポリマーブラシ」を調製し、その性質を研究しています。
この技術と知識を生かして、テレビ番組「超絶 凄ワザ!」の「汚れがすぐ落ちる!究極のまな板編」(NHK総合2017年1月14日(土)放送)に出演しました。その体験をお伝えしようと思います。

図1に示すように、ポリマーブラシとは「固体の表面から生えた多数のポリマーの集まり」のことです。
ポリマーブラシには様々な種類がありますが、なかには非常に水と仲が良く、図2の写真のように水滴が一瞬で濡れ広がるようなものもあります。
水と仲が良ければ、反対に油とは仲が悪くなります。
ですので、油が付いても水できれいになる表面を作ることができます。
このような性質をもつポリマーブラシをまな板に生やし、「汚れないまな板」を作ってほしい、という番組からの依頼に挑戦することになりました。

図1.ポリマーブラシの概念図

図2.親水性ポリマーブラシ表面の液滴の様子

プラスチック製まな板の表面からポリマーブラシを生やすことは予想以上に難しいことでした。
特に、大きな板に均一に生やすことが難しいのです。
1か月もの間、研究室のメンバーと協力しながら、毎日朝から晩まで実験を繰り返しました。
いろいろな化学反応を駆使し、方法や条件を変え400以上のサンプルを作りました。
しかし、収録の前日になっても、ポリマーブラシを生やす方法を確立できていませんでした。
いよいよ諦めかけていた夜7時頃、海外出張から帰国した先生が直接研究室に駆けつけ、紫外線を照射してポリマーブラシを生長させる方法に改良を加えてくれました。
すると、ポリマーブラシが生え、ラー油がスルリと落ちました!
その夜は、一心不乱に出発時間ギリギリまで、まな板に紫外線を当て続け、収録用のまな板を準備しました。
朝になると、息つく間もなく新幹線に乗り名古屋のスタジオに向かいました。
収録では、実際にラー油を付けて洗い流す試験が行われました。
その間、私たちにできることは、自分たちの努力を信じることだけでした。
結果を聞いたとき、非常に安心しました。
なんと、水を流すだけで通常のまな板より6.5倍も汚れが落ちたのです(図3)。

 

図3.

「まな板にポリマーブラシを生やす」という今回の挑戦は困難に満ちていました。
最後に先生が加えた工夫も数多くの試行錯誤がなければ生まれませんでした。
〆切寸前でも決して諦めない執念が実を結んだのだと思います。
苦労も多かった分、大きな達成感も得ることができました。
今後も強い意志をもって、研究を楽しみたいと思います。


図4.収録後の記念撮影(1番左が筆者)

塩本昌平(工学院大学)投稿レンジャー