二回にわたり、コンタクトレンズというこれまでに登場した製品を通しゲルのお話をさせて頂きました。
今回は、少し未来へ向けお話したいと思います。
ゲルの研究開発を続けるうちに、とても不思議なゲルと出会いました。
約1gの粉末を100gの水に溶かすと、逆さにしても落ちないくらい硬いゲルができました。
専門の言葉で『含水率(ゲルの場合、100g中水が何gを占めているか)』と呼びますが、コンタクトレンズ用のゲルの含水率は、高いもので80%くらいです。これ以上水の比率が高くなると、コンタクトレンズに使用するような素材の場合、柔らかくなりすぎて形を保てません。

ところが、この新しいゲルは、たくさんの水分を吸収し、硬いゲルになります。
そこで、どうやってこれだけの水分を保持しているのか、中の様子を見てみたくなりました。
前回このコーナーで、とても小さなナノメートルの加工が紹介されていましたが、このサイズの世界は、加工することも観察するのは、なかなか大変です。
小さなものを見たい時、皆さんはどうしますか?
虫眼鏡、顕微鏡・・・今は、電子顕微鏡というナノメートルの世界を観察できる装置があります。
ところが、通常の電子顕微鏡は、真空にして測定を行うため、ゲルの水分が飛んでしまい、水の中での様子を観察することは難しかったのです。
そんな時、空気の中に試料を置いたまま、観察できる電子顕微鏡(倒立型大気圧走査電子顕微鏡/日本電子製 (ClairScope JSAM-6200))を発見!
そこで、さっそく試したところ、吸水したゲルの中で、高分子鎖(ゲルを作っている鎖)がネットワークを作り、水中で広がっている様子を観察できました(実際には、ナノゴールドいう物質を鎖に付着させてみやすくしています)。

この観察をはじめいくつかの先端分析から、約5nmの鎖が、ところどころくっつき(架橋点といいます)ネットワーク構造を作っていますが、架橋点と架橋点の間が数百nmになる広がりを作っていることがわかりました。


このゲルは、ペプチドという物質で作られています。
このように、最新の科学技術によって、これまでなかった性質を持つ物質に出会えたり、これまでわからなかった中身を正確に理解することができたりしています。

伊藤恵利(株式会社メニコン)企業レンジャー