九州地区高分子若手研究会・夏の講演会

主催 九州地区高分子若手研究会、高分子学会九州支部

日時 629日(金)

会場 ホテルクラウンパレス小倉

(福岡県北九州市小倉北区馬借1-2-1

Tel. 093-511-4111 Fax. 093-511-4112

プログラム

招待講演(Q&A)
今回も若手で活躍されている4名の先生に熱いご講演いただきました。さらに今回、新企画として「質問カード」を導入し、先生方に後日送付し一部にご回答を戴きました。先生方、講演後までお世話になりました!(全員いい質問・コメントばかりでビックリしました)

山本 拓矢 先生

環状ブロック共重合体の自己組織化によるミセルの構築と
機能発現
 質問・メッセージ  山本先生からの回答
 ミセル化したリニアのミセルと環状ミセルの特性は溶媒を変えることで変化したりはしますか (M1男) 現在のところミセル化に使える溶媒は水だけです。しかし、水に添加剤を加えることで耐塩性の実験のように曇点の変化が現れると考えられます。
 環状ポリマーミセルの組織化構造については直接観察されましたか (M1 男)。  AFMおよびTEMを用いて観察しました。
 環状ポリマーの親水部や疎水部の構造を変えたりするとミセル化したときの変化はありますか。 (M1男) 現在、8の字型や4本鎖スター型などの両親媒性ブロック共重合体を合成し、自己組織化を検討しています。
 リニアポリマーと環状ポリマーを混合してミセルを作った場合、リニアポリマーと環状ポリマーが混ざったミセルが出来るのかそれぞれでミセルが出来ているのか,確かめているのか...(D2男)  耐熱性および耐塩性が段階的に変化したことから混合のミセルが形成していると考えられます。
 ミセルの中に取り込むことによる触媒反応に関して、基質分子がミセル内部に取り込まれるDFは何か。表面積的にはミセルでは不利な点があると思うが..(D2男)  DFは疎水性相互作用です。ミセルの総表面積は、水・有機溶媒の2相系よりずっと大きいと考えられます。
 環状ポリマーを高収率で合成するコツはありますか?あるいは環状と線状を分離する方法はありますか?  合成のポイントは、高希釈下で長時間の反応を行うので、分解・副反応が起こらない条件を見つけることです。Liquid Chromatography at the Critical Conditions (LCCC)と呼ばれる手法で環状と線状の分離が報告されていますが、分取スケールで行うことは非常に困難だと思われます。
 今回親水性の物質を内包されていましたが、実際の薬剤には疎水性が高いものが多々あります。疎水性の蛍光基を内包した場合どのような放出挙動を示すのでしょうか (M1男)。  ミセルからのピレンを用いた放出実験を行いましたが、この場合でも環状高分子ミセルの方が直鎖状高分子ミセルより放出が遅いことが確認されました。
 ミセル触媒なのですが、これは簡単に除去できるのでしょうか。(M1男)  高分子のため低分子との分離は簡単です。
 疎水性溶媒中ではどのような構造変化が起こるのでしょうか。(B4女) 良い条件を見つければ逆ミセルになると考えられます。
 高温・高塩濃度・強酸性などに耐性のある環状高分子ミセルが構築できた後、このミセルはどのようなものに応用できるのでしょうか (B4女) 耐熱性のコントロールを活かしたDDSや耐塩性を活かした界面活性剤の開発に応用できると考えられます。
 ミセルの耐塩性の話についてなのですが、L-ミセル、C-ミセルについてそのような研究をする理由とメリットについて教えて下さい。  高分子の化学構造や分子量を変えることなく、材料の特性を向上させるのは非常に有意義なことです。耐塩性は硬水でも使用できる界面活性剤としての応用を考えています。
 本当にミセルになった際に環状を維持できるのか  一般的に自己組織化によって結合が切れることはありません。また、ミセル化後再溶解しNMRを確認しています。
 ブリッジによって凝集されるならば濃度に敏感に依存して良いのでは  濃度を変えた実験も行いましたが特に顕著な差異は見られませんでした。理由は現在考察中です。
 環状ポリマーミセルの熱的安定性を濁度測定によって評価されていましたが、蛍光プローブ法で評価されたことはありますか?同法は疎水場の有無を評価できるので先生の提案されているメカニズムに関する知見が得られるのではと思います。  蛍光プローブ法も試したことはあります。確かにこちらの手法で詳しく実験することにより新たな知見が得られるかもしれません。ご提案ありがとうございます。
 ご講演ありがとうございました。直鎖状高分子と環状高分子から形成されたミセルで耐熱性が大きく異なっていたようですが、ブロック高分子自身のA/Bの割合を変えた時に転移点がどのように変わってくるのか教えてい頂けると幸いです。(D2男)  ミセル化する親水疎水比は限られており、現在の段階は包括的な検討は行えていません。今後の課題にしたいと思います。
 また、温度応答性を有する高分子からミセルを形成した場合にどのような耐熱性が得られるとお考えでしょうか?  おもしろいアイデアだと思います。さらに複雑な系になるので予想は困難なのですが、有為なトポロジー効果が現れると思います。
 環化反応は希薄溶液中で行われると思うが、Click体を選択的に得るに濃度のオーダーはどの程度まで下げなければならないのか。(M1男) 0.25 g/Lで環化反応を行っています。
 疎水基のモノマーを変えた場合、モノマーの種類によってどのように熱的性質など諸物性が変わると思われますか。(B4男)  PMA-PEOで行った場合はPBA-PEOに比べて熱安定性の差異は小さくなりました。
 C-gelのラメラ構造のSAXS測定において、IP像から一軸配向しているように見えましたが、なぜ軸配向しているのでしょうか。 (M1男)  全体では一軸配向はしていません。測定箇所が小さかったためその部分が配向していたものと思われます。
 L-gelを高温にするとhexagonalな構造になるとありましたが、これは、どのような原理で起こるのでしょうか。また、hexagonalな構造だと、どのような麺が特長であり短所であるのでしょうか。(B4男)  相分離構造は通常親水疎水比および高分子濃度で決まります。今回、直鎖状高分子と環状高分子ではこれらが同じにも関わらず違った相分離構造を見せたところが興味深いと考えます。
 高分子ミセルを研究している身としてとても興味深いお話しでした。線状と環状のミセルの会合数はSLS等から決めることはできると思うのですが、線状と環状で差は出てくるのでしょうか?また、SAXS等から疎水部のコア、親水部のシェルの構造も調べられると思います。球状と線状での凝集のしやすさの違いがこのあたりから何か分かるのではないでしょうか?(PD男)  SLSによると会合数は環状の方が直鎖状より若干小さいようです。ミセル状態のX線回折も行いましたが濃度の問題から良いデータが得られませんでした
 L-polymerミセルとC-polymerミセルを比較して○会合数は同じと考えて良いですか?○会合状態では、ミセルとモノマーが動的平衡にありますが、交換の速度はどちらが速いでしょうか?一般には環状ですが。これらのことが、ミセルの安定性に関わってくるのではないかと思います。(助教・女性)  会合数は環状高分子ミセルの方が直鎖状より少し小さいです。交換は環状の方が速いと予想されますが、交換速度の測定はできていません。仰る通り、これが安定性の要因になっているかもしれません。
 
 質問・メッセージ 幹事から勝手に回答 
   
   
   

土屋 康佑 先生

有機薄膜デバイスの高性能化を目指した電荷輸送性ブロックコポリマーの合成
 質問・メッセージ  土屋先生からの回答
 低分子に比べて高分子の薄膜デバイスの純度はどの程度なのか。どこまで純度を上げることができるか?(B4・女) 高分子デバイスでは、重合に使われる金属触媒などが不純物として存在しますが、数百〜数十ppm以下に抑えることが必要で、イオン交換樹脂や有機配位子を用いた洗浄で取り除くことができます。
 ドメインサイズが同程度のラメラ構造とシリンダー構造ができた場合に、太陽電池の変換効率にどのような違いが出てくるか?(M2・女)  十分に界面の面積を確保できる数nm〜数十nmというサイズであれば、変換効率を向上するためにはどちらの構造でも問題ないと考えていますが、電荷輸送の異方性が2次元的か1次元的かという違いがあります。
 高分子−高分子間の反応は収率・修飾率が悪いイメージがあるが、収率は何%ぐらいなのか? (M1・男)  私たちの系では、ポリエチレンオキシドやポリジメチルシロキサン等のソフトセグメントを過剰に用いているので、修飾率はほぼ定量的です。ただ、分子量5000以上の高分子を用いると、修飾率が下がってきてしまいます(80〜90%)。
 薄膜太陽電池において、ラメラ構造が電極に対して完全に垂直になっているのか?もし平行な構造があった場合、伝導度にどのような影響があるのか?(B4・男)  デバイス表面のAFM像においてラメラが見えている場合でも、構造の乱れている場合は変換効率が大きく低下しており、平行になってしまっているドメインが存在すると考えています。ラメラが電極に平行になった場合、電荷移動をブロックする可能性があるので全体の(電気)伝導度としては下がってしまうと思います。
 P3HT-PDMSの系でPDMSの分率が増えると良いという結果だったが、素子の直列・並列抵抗はどのように変わるか?UVやIPCEの変化があれば知りたい。(M1・男)  ブレンド材料中のPDMSの重量分率が5%程度までは変換効率の向上が見られましたが、これ以上PDMSの分率を大きくすると極端に電流値が下がり抵抗値が大きく上昇していると思われます。5%以下の場合は、PDMSの分率が上がるとともにP3HTのUV吸収が増大しており、構造変化に由来していると考えています。
 有機薄膜太陽電池では、太陽の熱で高温状態になると思うが、化合物はどのくらいの温度に耐えられるか?変換効率は低下しないのか? (M1・女) 150℃で1時間アニーリングしてもTEM画像ではPCBMの凝集は見られませんでしたので、自動車内部など極端に高温にならない屋外であれば問題ないと考えています。ただし、変換効率は空気中の水や酸素の影響でも低下しますので、今後耐久性の評価もしたいと考えています。
 AFMで観察されるラメラの層の厚みと一分子から考えられるラメラの厚みは対応しているのか?(M2・男)  一分子から考えられるラメラの厚みに比べると、観察されているサイズは少し大きいものとなっています。ブロックコポリマーとPCBMとのブレンド材料を用いているためだと考えています。

 質問・メッセージ 幹事から勝手に回答 
 デバイス応用時の評価についてもっと詳細に知りたかった。(M1・男) 同感です。材料はデバイスにしてナンボですよね!
土屋先生の今後の研究に期待しましょう。
 内容が難しかったので、もっと勉強したいと思いました。(B4・女) 大丈夫!私もB4の時は何も理解できませんでした。 これから頑張ろう。

荏原 充宏 先生

形状記憶表面を用いた細胞の体力測定

 質問・メッセージ  荏原先生からの回答
 細胞の構造を変化させるだけで骨になったり筋肉になったりするのはなぜでしょうか?(B4・男) 小さい子供には将来の可能性があるように、まだ未熟な細胞にはいろんな細胞へと変化できる可能性を秘めております。例えば受精卵はすべての細胞になれる可能性があります。この際、いろんな刺激を与えることで細胞の遺伝子(設計図)の発現をコントロールすることができます。細胞の形というのもその一つの刺激と考えられてます。
熱刺激以外で形状記憶するポリマーはどれくらい存在しているのですか?(B4・男) よく研究されているものでは、磁場、電場、光、湿気、pHなどが挙げられます。
細胞の形状変化は繰り返すと劣化したりするのでしょうか?(B4・女) 私たちの体には“ダウンレギュレーション”という現象が見られます。これは薬を必要以上に投与しすぎると効かなくなってしまうという現象です。ひょっとしたらこれと同じような現象がみられるかも知れません。大変面白い質問です。
 形状記憶のパターンを変化させてた時、細胞の回転(右回り、左回り)に違いがあるのでしょうか?(M1・男) これは素晴らしい質問です。今のところ細胞が回転する際に一度丸くなってから向きを変えることがわかっておりますが、北半球と南半球で回転する向きが違うとかが分かったら大発見ですね!
病気などで細胞の状態がすぐれないとき、構造力学的環境の変化にどのように細胞は反応しますか?(M1・男) 私どもの知見では、例えば癌細胞と正常細胞では材料の“硬さ”への反応が違うことがわかっております。つまり、その違いをうまく見つけられれば新しい治療法の発見につながると期待しております。
 形状記憶変化するタイミングや速度を変えると反応が変わるのでしょうか?(M2・男) この質問が一番多くいただきました。“突然”というのは確かにあいまいな表現で、どれくらいの速度で刺激を与えるかというのがまさに重要な因子と思っております。今は数秒で変わる材料を使ってますが、数分、数時間とでは違いがでる可能性が期待できます。
 後進国向けの医療技術で障壁となるのはどんなことでしょうか?(D3・男) やはり水や電気、道路などのインフラが考えられますが、実は途上国でも携帯電話の普及率が異常に高かったりします。つまり、携帯電話で診断とか治療をするというプロジェクトも進んでおります。
 質問・メッセージ 幹事から勝手に回答 
 パワーポイントの作成の仕方やムービーを取り入れるなど、B4の私にも分かりやすく工夫されていて興味深かったです。(B4・女) ですね。准教授の私にも勉強になりました。
 パワポがオシャレでアメリカンで素敵でした!(M1・女) その表現がオシャレで素敵です。 

王子田 彰夫 先生

タンパク質機能化のためのケミカルバイオロジー研究
 質問・メッセージ  王子田先生からの回答
 今までは可逆で来なラベル化が主流だったのでしょうか?また、今まで不可逆なラベル化は困難だったのでしょうか?(B4・女)  これまで開発されている人工のペプチドタグとプローブのペアによるラベル化法は、ほぼすべて可逆的なラベル化法です。ですので私たちの開発したリアクティブタグシステムが世界発の人工的な共有結合ラベル化法になります。一方で、酵素反応を用いて短いペプチドに酵素基質を共有結合するラベル化する手法が別にあります(Alice TingのPRIMEシステムなど)。この方法は選択性も優れてよい反面、酵素の発現の必要性、基質構造の制限があるのが欠点です。
 先に紹介された2つのペプチドタグと今回、合成されたD4タグと亜鉛錯体との違いはありますか?(M1・男) 先に開発された2つのタグ/プローブシステム(テトラシステインループ系とヒスタグ系は可逆的なラベル化システムです。一方で、我々のリアクティブタグシステムは非可逆的な共有結合システムです。この点が一番の違いであり有利な点です。
 何故アラニン6個を導入すると反応速度が早くなるのでしょうか? おそらくはアラニン6個を反応部位となるシステインとD4配列間に挿むことでプローブのクロロアセチルの反応部位とうまく配向して反応がうまく加速されるのではないかと考えおります。一方で、アラニンの数が少ない(0個や2個)ではシステイン近傍にアニオン性のアスパラギン酸残基が存在するため、(プローブと相互作用にしている状態においても)システイン残基のpKa値が高く反応性が低下していると考えられます。アラニンを6つほど挿んでやると、アスパラギン酸のマイナス電荷の効果が薄れるのかもしれません。
 ラベル化剤として蛍光分子の他に、ある温度に変化する分子や音などの外部刺激で変化する分子を用いることは可能でしょうか?(M1・男) たいへんおもしろい発想だと思います。基本的には可能です。我々のリアクティブタグ法は基本的にプローブ構造に制限があまりないのが特徴ですので、蛍光以外の様々な人工機能性分子をタンパク質上に導入できます。
 薬剤師2年の博士コースには外部から行けたりするのでしょうか? (M1・男)  残念ながら無理です。薬剤師になるには、所定の薬学部の教育を受けないとだめです。したがって博士過程だけ入学して薬剤師になることできません。

 質問・メッセージ 幹事から勝手に回答 
 薬学部という他学部でも高分子に通じるものがあり、重要性を更に知りました。(M1・男) まさにそれを伝えたくて王子田先生をお呼びしました。 良かったです。
 薬学部のシステムのややこしさに驚きました(M1・女) 私は、薬学部で教えてみたいと妄想してました。 

学生講演&若手研究者講演

    

学生講演@ 可逆反応を利用した共有結合性2次元構造に関する研究

(熊大院自然)田上 亮太  

学生講演A キチンナノファイバーフィルムからの表面開始グラフトATRPによる複合材料創製                                (鹿児島大院工)吉田 翔  

 

学生講演B ナノゲル粒子の相状態・高分子密度がタンパク質結合・解離速度に与える影響                                     (九大院工)仲本 正彦  

学生講演C カチオン性かご型およびラダー型シルセスキオキサンの選択的合成

(鹿児島大院工)正入木 未来   


質疑にも熱が入ります

講演中

良く頑張りました

熱気で曇ってます

若手研究者講演@ アミノ酸(リジン)構造を持つウレタン誘導体の合成と重縮合によるポリペプチドの合成                        (近大分子研)山田 修平  

若手研究者講演A ペプチド脂質を用いる極性及び非極性溶媒中における色素の高機能化と応用に関する研究                       (熊大院自然)龍 直哉


懇親会

近年、少々惰性化していた研究室紹介を活性化すべく、パワポによる研究室紹介を廃止し、カラダで勝負の発表をしてもらいました。その結果、どの研究室も相当インパクトの強いプレゼンで、激アツ(死語?)でした。九州パワーは健在でしたね。私もカンチレバーをやらせていただきました。



まずは幹事から

乾杯を待つ参加者

乾杯は中戸先生

かんぱ〜い♪

女性陣

若手会幹部+D3

山元先生+古荘先生

九大君塚研

九大片山研

羨ましいショット

♂のみ

う〜ん、どこ?

片山研2

九大三浦研

鹿児島大一同

北九大櫻井研

櫻井研2

九大中嶋研

幹事2

長大・吉永研

トップは大石・成田研

もう一度会いたい・・・

有望キャラの予感

確かスギちゃんネタ

まさに美女と野獣

この後頑張りました

黒いのなんだっけ・・・

スベらないネタ披露

すっかり定番コント
この後の写真募集中
夜の勉強会(反省会)

ホテルにとってもお世話になり、夜の勉強会も盛大に行えました。ものすごい参加率でにぎやかで楽しかったです。