こんにちは。学生レンジャーの三浦です。
第4回は、前回に引き続きドラッグデリバリーシステム (DDS) についてお話します。

ドラッグデリバリーシステムとは、薬が作用する量・時間・空間を制御するシステムのことでしたね。
前回までの記事で、量や時間のコントロール方法についてお話してきました。
今回は空間のコントロールの方法についてお話します。

量のコントロールの回でもお話しましたが、病気の細胞だけに薬を届けられたら嬉しいですよね。
空間のコントロールは、それをもっと広範囲に、外からの力で行おう!というものです。
外からの力とは例えば、超音波温度が挙げられます。
イメージとしては、薬を服用した後に腕を温めていると、腕にやってきた薬だけが効果を発揮する、という感じです。
このように外からの力で行うことにより、望みの場所で薬を作用させることができます。
どこで薬を効かせるか人の手で制御できる、という点が面白いですよね。

このような機能を薬に付与するのは、もちろん!高分子の力です。
超音波や光、温度を察知して性質が変わる高分子、というものがたくさん研究されています。
そのような高分子から作られる球やゲルの中に薬を入れておき、外からの力で高分子を変形させれば、中に入れておいた薬が放出されて、機能するというメカニズムです。


外からの力 (刺激) を使って、特定の場所で薬を放出します

外からの力に応答する高分子の設計は、とても大事です。
例えば、温度に応答して変形する高分子を体の中に入れたとしましょう。
高分子を変形させて薬を放出させるために、腕を80度まで温めなければならないとしたらどうでしょうか?
…ちょっと熱すぎて大変そうですよね。
そこで患者さんが苦労せずに使用できるように、最適な条件の中で変形するように設計することが重要となっています。
例えば、温度を使うなら体温に近い40度付近になるように、
光を使うなら体の中まで通る波長(近赤外線光)に応答するように、などです。
このように様々な工夫を凝らせるのも、高分子の特徴のひとつです。

前回と同様、今回お話した空間の制御方法は、ほんの1例に過ぎません。
世界中では、違う手法を用いた方法もたくさん研究されています。
気になった方は、是非調べてみてくださいね!

さて、4回にわたって薬と高分子の関係、特にドラッグデリバリーシステムに着目して説明してきました。
ドラッグデリバリーシステムによって治療の効果が向上するだけでなく、
薬の投与量・回数や必要な通院回数の減少を通じて、
治療途中の患者さんの生活の質(Quality of Life: QOL)も向上できると期待されます。
ドラッグデリバリーシステムを支える高分子の研究、これからもどんどん進歩してほしいですね!

最後に余談ですが、私は工学部で研究を行っています。
薬といえば薬学部や医学部の研究では?と思われることが多いのですが、必ずしもそうではありません。
医療の分野では、薬の専門家・治療の専門家・材料や機械の専門家、
それぞれの専門家の力を合わせて、より良い医療を実現しようとお互いに切磋琢磨しています。
このような研究分野間の連携は「医工連携」と呼ばれ、さまざまな大学で進められています。
医療系の研究がしてみたいな~と考えている中高生のみなさん、
ぜひぜひ工学部や理学部など他の学部にも視野を広げてみてくださいね。

みうらレンジャー
京都大学 秋吉一成研究室 D1 : http://www.akiyoshi-lab.jp/