レンジャーの野々山です。
2018年5月末に愛知県名古屋市の名古屋市立大学病院にある医療デザイン研究センターを訪問してきました!
大学病院内に設置されており、しかもあまり聞き慣れない「医療デザイン研究」というとてもユニークな位置づけの研究センターでした。
ここでは、医療に関する非常に多岐にわたる研究・開発を、國本桂史先生をリーダーに行っていました。
具体的には、応力計算から最適化された形状の喉頭鏡(気管を開ける医療器具)やCT/MRI用の長時間でも負担が少ない枕、軽量な人工骨、さらにはその場で手術できる救急車(ドクターカー)まで幅広く行っています。
この記事では、主に高分子材料が関わる研究について紹介したいと思います。

皆さん3Dプリンターを聞いたことありますよね?
ここ数年で飛躍的に市場が広がり、先端研究や企業のラピッドプロトタイピング(手早く試作品を作ること)だけでなく、家庭向けの趣味用のプリンターでも低コストで高性能なものが続々出てきていて、個人で持っている方もいるかと思います。
3Dプリンターで出力される最も一般的な材料は高分子です。
3D プリンティングの方式にもよりますが、①室温では硬い高分子(ガラス状態と言います)を熱することでドロドロの液体にして流動性を持たせた状態でプリントする「材料押出堆積法」、②高分子となる液体の前駆体化合物(モノマーと言います)にレーザー光などを照射し、高分子重合反応によって固体化させて形を造る「光造形法」、の2通りがあり、どちらも高分子の特性を活かした方法です。
このセンターでは、一般的に3次元造形の精度が高く造形速度が速い光造形方式の3Dプリンター(すごく高価な装置のようです!)を使って、患者さんの臓器のモデルを1分の1スケールで作製しています。

まず、患者さんの患部の3次元データをCT(コンピュータ断層撮影)やMRI(核磁気共鳴イメージング)などの画像診断から取得し、そのデータを元に3Dプリンターで作製します。


画像は、ある患者さんの腎臓の1分の1スケールモデルです。
腫瘍(ガン)の部分に色が付けられていて視覚的にとてもわかり易いですね。
このモデルを使って、外科の医師と最適な手術の方法を検討します。
國本先生曰く、臓器の位置や形は患者の姿勢や向きによって大きく変わってしまい、一般的な手術時の姿勢から変わってしまうだけでベテランの外科医師であっても腫瘍部位がわからなくなってしまうそうです。
ただし、臓器や腫瘍の位置によっては、一般的な仰向けよりアプローチがし易い姿勢があり、この3Dプリンティング臓器モデルを用いて、最も効率よく短い時間で手術できる術式や患者の姿勢を事前に検討・シミュレーションできるというわけです。
実際にこの腎臓手術は、長時間かかる手術が大幅に短縮できました。低侵襲であれば患者さんの負担も大きく軽減できます!


また、この研究センターでは企業と共同で、新しい3Dプリンター材料の開発も行っています。
既存の3Dプリンティングで得られる造形物は、基本的には硬い樹脂製であり形状は正確ですが、硬さは実際の組織と大きく異なります。
より実際の組織に近い硬さのモデルで手術のシミュレーションを行うために、極めて柔らかい3Dプリンター用の素材を実装しています。
動画は、気管支モデルですが、手で簡単に変形できるほど柔らかい造形物が得られて、実際の臓器の硬さに近いそうです。

このように高分子の3Dプリンターは飛躍的な発展によって、工業利用だけでなく、医療の現場で臨床の問題を合目的的に解決する強力なツールになりつつあることを強く実感しました。
これまでに長時間を要する手術や名医でしかできない難しい手術も、患者に対してより負担が小さく、またどこでも受けられる医療の一つになるかもしれません。

ののやまレンジャー