九州工業大学で開催された高分子討論会の直後、10月4~5日の1泊2日の日程で、会場に程近い景勝の地、関門大橋のすぐ近くの国民宿舎めかり山荘にて、「関東高分子若手研究会ミニシンポジウム」を開催いたしました。参加者は16名、関東のメンバーを中心に、名古屋、石川、三重、そして地元北九州とミニシンポジウムならではの多彩な顔ぶれとなりました。テーマは「相分離に託す夢」、ブロック共重合体、高分子-液晶混合系、はたまた、スメクチック液晶もメソゲンとアルキルテールの相分離と考えれば「相分離」であり、ユニークな講演会になったと感じております。
幕開けは、谷本智史先生(北陸先端科学技術大学院大学)に「X線小角散乱法を用いた結晶性ブロック共重合体の高次構造研究」と題して、非晶- 非晶ジブロック共重合体ではなく、1成分を結晶にしたとき、結晶化に伴うモルホロジーの変化を紹介いただきました。小角X線散乱法に限らず、今流行の「ナノ構造」を如何に見るかについても言及され、今後の研究に大いに参考になりました。1日目の講演はこれで終わり、あとは、懇親会を兼ね、夕食でふぐを味わいました。その後、宿泊の部屋で深夜まで酒を酌み交わしながら各自の研究の話や、四方山話に花を咲かせました。
2日目は、朝食後午前9時より松山明彦先生(三重大学)に、「高分子と液晶の相分離」と題し、高分子と液晶の相分離の熱力学的取り扱い、それを発展させて液晶高分子の液体-液晶相分離の計算結果を紹介いただきました。最後に舟橋正浩先生(東京工業大学)に「液晶性有機半導体の電気伝導と機能」と題し、スメクチック液晶の電気伝導と機能化について紹介いただきました。あわただしくも楽しく有意義な1泊2日のミニシンポジウムでした。
ミニシンポの写真
<趣旨>有機化学はさまざまな化学構造を作り上げることを可能にし、量子化学の発展とともに、機能分子を生み出す宝庫となっています。しかし、材料として機能を発現するには、機能分子でその機能を発現する高次構造を作り上げなければなりません。このミニシンポジウムでは、高次構造を自発的に形成させる相分離に着目し、その最先端を研究されている若手研究者に講演をお願いしました。講演の前後や合間には、会場を囲むめかり公園でリラックスできます。小高い丘から関門海峡を眺めれば、圧倒される景観に言葉も出ないと思います。波打ち際で潮流の音を聞き、急流と渦潮の中に、はるか遠い昔の源平の合戦に思いを馳せれば、波間に浮かぶ巌流島に、宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘の声を聞くことができるかもしれません。関門海峡の潮流と関門橋の眺めを十分堪能しなあと、海峡の海底のさらに下のトンネルを行けば、対岸の下関にたどりつきます。