平成21年度 高分子学会北陸支部福井地区講演会
日時:平成22年1月29日(金)午後3時30分〜4時30分
場所:福井大学工学部1号館118M講義室
講師:名古屋工業大学大学院工学研究科ながれ領域
吉水広明准教授
講演題目:高分子結晶場を用いた気体分離膜の創成
講演要旨: 高分子中の気体分子は,分子鎖間をくぐり抜けている.したがって,空間的に規則正しく並んだ分子鎖間隙での挙動を観察し,解析することは,気体輸送特性の本質を知る上で重要であるばかりか,新規な高機能性気体分離膜などの創成につながると考える.本講演では,ポリ4-メチル-1-ペンテン(PMP)の型結晶や,シンジオタクチックポリスチレン(sPS)の α結晶並びにメゾフェイズ結晶を取り上げ,これらの結晶構造の特徴と気体輸送特性の因果関係について述べる.PMPに収着したXeの129Xe NMRスペクトルを観測した結果,個々に独立した空間として存在する非晶相の極微小空隙よりも,シリンダー状に連結した結晶相の分子鎖間隙空間の方がより有効な拡散経路であると考えられた.一方,各結晶を有するsPS膜を調製し,129Xe NMRや気体透過・収着測定を行った結果,α結 晶は非晶相より透過性・拡散性が向上したが,メゾフェイズ結晶では減少した.α結晶が構築するキャピラリー状空孔は一直線上に連結しているため気体分子が拡散しやすく,メゾフェイズ結晶の分子キャビティーは空孔が一つ一つ独立しておりその連結性の悪さに起因する結果と推察された.
連絡先:工学研究科 生物応用化学専攻 前田史郎
E-mail: smaeda@u-fukui.ac.jp
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